財布を上野駅のトイレに置き忘れてしまう(前半)

ある出来事

あれは東京での社外研修を終えた帰りの出来事でした。

1日の研修を終えた私は電車で上野駅に到着したころ、急に大きいほうの便意を催してきたため、駅のトイレの個室に入ることにしました。それが事件の発端でした。

私はズボンの後ろのポケットに財布を入れる癖がありました。その日はスーツ姿で最初は胸ポケット財布を入れていたのですが、駅構内で買い物をした後ついついズボンのお尻のポケットに財布を入れていました。財布は黒い二つ折りのタイプで少し厚みがあります。スーツ姿であればお尻のポケットに入れていると少し膨らんで見栄えが悪いのにいつもの癖でお尻のポケットに。。。

トイレに入ると当然お尻のポケットに入っている財布が邪魔ですから、ポケットから出して便器の脇にある棚のようなスペースにこれまたついつい置いてしまいました。その時持っていたカバンに入れれば問題なかったと思うのですが、無意識というか、自然にというかトイレの棚に置いてしまったのです。

用を足した後、私は財布を棚に置いたことをすっかり忘れ。そのままトイレを後にしました。早く帰りたいという気持ちがあったので少し慌ててトイレを出てしまったからかもしれません。帰路につくため自宅がある路線の電車に乗り、座席に座るとすぐに目を閉じて眠ってしまいました。そして1時間くらい経って自宅の駅に着いたのでSuicaを出そうとした時にはっと気がついたのです。「財布が無い!」スーツのポケットというポケットを手探りで確かめ、カバンの中も何度も確認してみましたが無い!その時すぐに思い出しました。「上野駅のトイレに置き忘れたんだ」と。私はすぐに携帯電話で上野駅に電話をかけました。。。。

上野駅のお忘れ物承り所に電話で確認したところ、財布の忘れ物は届いていないということでした。「やってしまった!きっと誰かに盗まれたに違いない」私はとてもショックで絶対戻ってこないだろうと覚悟しました。この日は給料日後で支払いなどもあるため8万円ほどの現金を入れていました。(普段は現金をあまり持たないので、この日は全くのイレギュラーでした)現金以外にも財布の中にはクレジットカード、キャッシュカード、Suica、運転免許証、健康保険証なども入っていました。

「ああ、現金は絶対抜かれてるだろうな。カード類は悪用されるかもしれないから早く停止させないと。いや、でもなんとか無事であってほしい。」頭の中ではいろいろとやるべきことが錯綜するのと同時に、「誰か誠実な人が拾って警察署に届けてくれていないだろうか。。。」
何とかそうであってほしい。いや絶対そうなっているはずだ!! 心から祈るような気持ちでした。

すると私の携帯電話に見知らぬ番号から電話がかかってきました。不安を感じながらも電話に出ると、上野駅の警察署からの電話でした。なんと!私の財布が届けられていたとのことでした。財布の中に入っていた名刺から電話をかけてくれたようです。財布の中身を説明するとピタリと一致しています。しかも中身は全て無事だったのです。この時は本当に嬉しかったのを覚えています。「神様、仏様ありがとうございます!心から感謝いたします!」 何度も小声でぶつぶつ繰り返し言っていました。周囲の人から見れば少し変な人に思われていたかもしれません。世の中にはなんて誠実で心優しい人がいるんだろうか、素晴らしい、日本だからかかな、日本サイコー。

財布の無事がわかりとても安心した気持ちになった私は急いで上野行きの電車に乗り換えて警察署に向かうことにしました。そして上野に向かう電車の中でまたいろんなことが頭に浮かんでくるのです。「まてよ、これは本当に大丈夫なのか?安心していいのか?ひょっとしたら私の財布を警察に届けてくれた人は財布の中身をくまなく調べて記録してあり、後から悪用しようとするのでは?そもそもなぜ駅員に届けず警察に届けた?拾得物だから警察に届けることは間違っていないか。。あまりにも出来すぎて何か裏があるのではないか?」など良からぬ妄想が頭に浮かび上野駅の警察署に着くまでは安心とは裏腹に少し疑心暗鬼にもなっていました。(後半に続く)

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