■初めて見たのはテレビの再放送
映画が始まってすぐ、私はその世界観に引き込まれていきました。この映画を初めて見たのは小学校の低学年のころテレビの再放送だったと思います。公開されたのは1939年のアメリカ映画ですから今から86年も前の映画です。主人公のドロシー(ジュディ・ガーランド)の家族や仲間に対する気持ちや感情は、子供ながらにすごく共感できました。これが物語にすぐにのめり込めることができた要因だったと思います。普段みんなと一緒に暮らしているときは、お互いの気持ちがすれ違ったり、つまらないことで相手に怒りをぶつけたり、何か不満なことを多く感じています。。。しかしその大切な家族や仲間と離れてしまったとき、私たちはその関係性の大切さやかけがえのないことに気が付くものです。

■魔法の世界そのもの
映画は白黒(セピア色)の映像で始まります。普段の農園での生活の様子がしばらく描写されドロシーと周囲の登場人物との関係性がわかります。そしてドロシーは突然の竜巻によって家ごと飛ばされてしまう絶体絶命的な状況において、竜巻の中で繰り広げられるユーモラスな表現が不思議でした。気を失っていたドロシーの目が覚めると魔法の国オズに運ばれていました。そしてここからはカラー映像で物語が始まるのです。つまり白黒(セピア色)の世界が現実で、カラーの世界が夢の国というわけです。色のないモノクロ映像の世界は退屈な日常や不平不満な世界観を表現しています。しかしカラーになった瞬間から現実では見たことのない風景や人物、魔女、魔法が繰り広げられます。非現実的なカラー映像の世界こそ現実感があるとは。。。私はまんまとこの映画の魔法の世界に入ってしまったのです。このモノクロからカラーの世界に変化する演出は東京ディズニーランドでもありました。ワンマンズドリームというショーです。最初は白黒の絵本の中にいたミッキーとミニーなのですが、これがどんどんカラーに変化してショーが始まるといった演出は、やはり魔法の世界にどんどん入り込んでいく感じでとても大好きでした。
■特撮のクオリティーがハイレベル
この映画の特撮は本当にクオリティーが高いと思います。その特撮シーンで感動したのものはいくつもありました。例えば悪い魔女が煙とともに消えたり現れたりするシーン。子供のときの私にとってこのシーンはまさしく魔法でした。どうやって撮影しているのだろうか? また案山子(かかし)の特殊メイクは感動ものです。顔のしわや首のところなど特殊メイクの境目がわからず、本当に布切れや藁で作った人形が動いていると感じる素晴らしい出来だったと思います。あと空を飛ぶサルたちが空から飛んできて地上に降りるシーンの自然な動きや、逆に小走りしながら飛び立っていくときのスムーズな感じなどたくさんあります。今でこそ仕掛けのあるマジックの種なども多少わかるため、撮影方法などは想像できるのですが、今見てもその不思議さはよくできているなと思います。
■いつまでも心に残る映画音楽
小さい子供のころは物語の途中で登場人物らが歌いだすことをミュージカルということは知りませんでした。でもそれが不自然なこととは思いませんでしたし、感情を歌で表現することは観客によく伝わって感動する演出だと感じていました。有名なオーバーザレインボーは作曲したハロルド・アーレンがとても気に入っていたものの、作詞担当のE・Y・ハーバーグは14歳のドロシーが歌うには大人びて気に入らなかったなど、撮影所幹部たちからも酷評があったといいます。しかし結果的にはアカデミー歌謡曲賞を受賞するほど大ヒットしました。また別な話ですが、ルパン三世カリオストロの城の主題歌である 「炎のたからもの」も宮崎監督が最初は気に入らなかったとか。。。私はこの曲は最高に好きな曲の一つです。カリオストロの城のイメージによく合っていると思います。大ヒットする裏ではその真逆のドラマがあるというのは珍しくないようです。
■子供のころは映画の最後の方で眠くなってしまう
私は子供のころオズの魔法使いを観る機会が何度かありました。しかし大体最後のほうは眠くなってしまうのが常でした。そのため半分夢の中で見ていたような気がします。まさに現実と夢のはざまでみていたので今でも不思議な夢のような映画のような気がします。上映時間は101分ですから1時間40分の映画です。そう考えると決して長い映画ではないと思うのですが、なぜか子供のころの私はエメラルドシティへ行くあたりから眠くなってしまい、その後のストーリーがあやふやだったりしました。
■2025年3月公開の「ウィキッド」が楽しみ
ピンクの魔女は「良い魔女のグリンダ」、緑色の魔女は「悪い魔女のエルファバ」です。この時見た悪い魔女は子供のとき本当に怖かったのを覚えています。

「ウィキッド」の上映時間は2時間40分という長時間です。上映中はトイレが心配です。しかしもっと長い作品が日本にあります。黒澤明監督の七人の侍は3時間27分です。これは途中でトイレ休憩があるという映画です。私は七人の侍を映画館のリバイバル上映で観たことがありましたが、さすがに3時間を超えるとトイレ休憩は必須ですね。でもこれだけ長時間の映画でしたが、あっという間に時間が過ぎたことを覚えています。つまり映画がとても面白いのです。常に先の展開がどうなるかハラハラしながら物語に没頭していたので時間を忘れていたのです。新しい映画「ウィキッド」も予告編を見ているとその映像のすごさや主人公たちの歌唱力のすごさが際立っているように感じました。これはぜひ映画館で観てみたい映画だと思います。